
「では次回、重要事項説明をさせていただきます」——ハウスメーカーとの打ち合わせで、こう言われたことはないでしょうか。契約が近づくと出てくる言葉です。
ただ、この「重要事項説明」が何なのかは、あまり知られていません。中古マンションを買った友人から同じ言葉を聞いたことがあっても、それと同じものなのかは分かりにくいはずです。
実は、注文住宅に関わる重要事項説明には2つの種類があります。根拠になる法律も、説明する人も別ものです。さらに、家づくりでいちばん金額の大きい工事請負契約には重要事項説明という制度そのものがありません。
この記事では、宅建士の立場からこの3つを整理しました。読み終えるころには、自分がいま何の説明を受けようとしているのか、契約前に何を確認すればいいのかが分かるはずです。
重要事項説明とは、契約する前に、専門家が契約の中身を説明する手続きのことです。
なぜこんな手続きがあるのでしょうか。家づくりは、売り手と買い手で持っている情報の量が違いすぎるからです。
不動産会社や住宅会社は、毎日その仕事をしています。一方で、家を建てるのは多くの人にとって一生に一度です。同じ土俵で契約内容を判断するのは、そもそも無理があります。
そこで法律は、専門家の側に「先に説明する義務」を課しました。つまりこれは、こちらがお願いして受けるものではなく、相手が果たすべき義務なのです。
分からないところを聞き返しても、気を遣う必要はありません。ここを勘違いしていると、分からないまま話が進んでしまいます。
1つ目は、宅地建物取引業法にもとづく重要事項説明です。友人が中古マンションで受けたのは、こちらにあたります。
この説明の対象になるのは、宅地建物取引業法35条1項が定める「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借」です。土地や建物を買う・借りるときの説明、と考えてください。
内容は次のとおりです。
注文住宅では、土地を不動産会社から買う場合にこの説明を受けます。土地探しから始める人は、土地の契約前に必ず通る手続きです。
一方、親から譲り受けた土地や、すでに持っている土地に建てる場合は、土地の売買そのものがありません。この場合、宅建業法の重要事項説明を受ける場面はありません。
プロの視点
土地の重要事項説明では、その土地に「建てられる家」の条件が説明されます。用途地域・建ぺい率・容積率・接道の状況などです。ここは希望の間取りが入るかどうかに直結します。住宅会社との打ち合わせが進んでいるなら、その図面を持ち込んで「この計画は入りますか」と確認しておくと確実です。
2つ目は、建築士法にもとづく重要事項説明です。注文住宅で実際に受けるのは、こちらのほうになります。
対象になるのは、設計受託契約(設計を頼む契約)と工事監理受託契約(工事が設計図どおりに進んでいるかを確認してもらう契約)です。
建築士法24条の7が定めている内容を整理します。
説明される項目も、条文で決まっています。
ここで知っておいてほしいのは、この説明に建物の面積の条件がないことです。小さな家でも大きな家でも、設計や工事監理を頼むなら説明を受けられます。
「うちはハウスメーカーに全部お任せだから、設計の契約なんて結んでいない」と思うかもしれません。
しかし多くのハウスメーカーや工務店は、自社で建築士事務所の登録をしています。設計も工事監理も、担当するのはその会社の建築士です。つまり、設計と工事監理を委託する関係は発生しているわけです。
その部分については、建築士法の重要事項説明の対象になります。打ち合わせで「重要事項説明をします」と言われているのは、たいていこれです。
ただし、契約書の形は会社によって違います。設計・工事監理の契約を別に結ぶ会社もあれば、工事請負契約とまとめて扱う会社もあるのです。
そのため確実なのは、自分の契約がどうなっているかを、その会社に直接聞くことです。「設計と工事監理の契約は、どの書面にあたりますか」と聞けば足ります。
なお、土地も同じ会社の仲介で買うなら、宅建業法の重要事項説明も別に受けます。説明の機会が2回ある形です。
ここは、注文住宅でいちばん誤解されやすいところになります。
家づくりで金額がいちばん大きいのは、工事請負契約です。数千万円になります。ところがこの契約に、重要事項説明という制度はありません。
理由は法律の作りにあります。宅地建物取引業法が対象にしているのは、先に見たとおり「売買、交換、貸借」です。工事を発注する請負は、この中に入っていません。だから宅建業法の重要事項説明の対象外なのです。
では、請負契約は何も守られていないのでしょうか。そうではありません。建設業法19条1項が、契約の当事者に契約書面を作成し、署名または記名押印して互いに交わすことを義務づけています。
書面に記載する項目も決まっています。主なものは次のとおりです。
つまり請負契約は、「説明される」のではなく「自分で読む」ことが前提の契約です。ここが、2つの重要事項説明ともっとも違う点になります。
プロの視点
上の5つ目、「設計変更や工事中止があったときの取り決め」は必ず目を通してください。注文住宅では、着工後に仕様を変えたくなる場面がよく起こります。そのときに費用と工期がどう変わるのかは、この条項で決まります。契約書は説明を待つのではなく、事前にコピーをもらって、家で読む時間をつくりましょう。
ここまでの内容を、その場でできる行動に落とします。建築士法の重要事項説明を受けるとき、確認するのは次の3つです。
1. その人は建築士か
説明する建築士には免許証を提示する義務があります。提示がなければ、「免許証を見せていただけますか」と聞いて構いません。義務なので、失礼にはあたりません。
2. 登録された建築士事務所か
設計や工事監理を業として受けるには、建築士事務所の登録が必要です。「御社の建築士事務所登録はどちらですか」と聞けば分かります。
3. 書面での説明を受けたか
条文は「書面を交付して説明」と定めています。口頭で済まされていないか、書面を受け取ったかを確認してください。なお、こちらが承諾した場合は、メールなど電磁的な方法での提供も認められています(同条3項)。
そして、契約を結んだあとにも書面の交付があります。建築士法24条の8は、契約したときは遅滞なく書面を交付するよう定めています。契約して終わりではなく、書面が手元に残る形が正しい流れです。
3つの手続きに共通しているのは、すべて契約前だと決まっていることです。
これは偶然ではありません。契約を結んだあとは、条件を変えるのに費用と時間がかかります。だから法律は、判断材料を契約前に渡すよう決めているのです。
そして同じことが、会社選びにも当てはまります。
説明の丁寧さは、その会社の姿勢がよく出るところです。専門用語をかみ砕いて話してくれるか、聞き返したときに嫌な顔をしないか。ここは、実際に説明を受ける前でも、提案や見積もりのやり取りから見えてきます。
複数の会社から提案をもらっておくと、その差が分かります。1社だけだと、その説明が丁寧なのかどうかを比べる相手がいません。
金額の見方については坪単価の仕組みとハウスメーカーの値引きの仕組みでも解説しています。契約前に見ておくと、提案の読み方が変わります。
とはいえ、1社ずつ問い合わせて同じ条件を伝えるのは手間でしょう。タウンライフ家づくりなら、同じ要望で複数社の間取りプランと資金計画を無料で取り寄せられます。契約前に判断材料をそろえる方法のひとつです。
Q. 重要事項説明を受けていない気がします。どうすればよいですか。
まず、自分がどの契約を結ぼうとしているかを確認してください。設計・工事監理を委託するなら、建築士法の重要事項説明の対象です。心当たりがなければ、「設計と工事監理の重要事項説明は、いつ受けられますか」と聞いてみましょう。説明は事務所側の義務なので、遠慮する必要はありません。
Q. 説明の場に配偶者も同席したほうがよいですか。
可能なら同席をおすすめします。説明は一度きりで、内容も多岐にわたるからです。2人で聞けば、聞き漏らしを補い合えます。共有名義にする場合や、資金を出し合う場合はなおさらです。
Q. オンラインでの説明は認められていますか。
建築士法24条の7第3項は、建築主の承諾を得れば、電子情報処理組織を使う方法などでの提供を認めています。この場合、書面を交付したものとみなされます。承諾するかどうかはこちらが決められるので、対面で受けたいなら、その旨を伝えて構いません。
Q. 土地がすでにある場合、宅建業法の重要事項説明は受けないのですか。
土地の売買そのものがないため、宅建業法の重要事項説明を受ける場面はありません。ただし建物の設計・工事監理は、建築士法の重要事項説明の対象です。「重説がないまま進んでいる」わけではないので、そこは分けて考えてください。
Q. 説明を聞いても、内容が難しくて判断できません。
その場で「いま説明された部分を、契約前にもう一度確認したいので書面をください」と伝えて構いません。条文が書面の交付を定めているのは、その場で理解しきれない前提があるからです。持ち帰って読む時間をつくりましょう。
そして、これらはすべて契約前の手続きになります。条件を比べられるのも、質問できるのも、印鑑を押す前だけです。
まずは複数の会社から提案を取り寄せて、説明の丁寧さも含めて比べるところから始めてみてください。
※本記事は2026年7月31日時点の法令にもとづく一般的な制度の解説です。個別の契約内容については、契約書と担当者へのご確認をお願いします。